« 50年前の恐怖 | トップページ | ピラミッドについて »

 数年前になるかと思うが、一匹の猫が事務所のベランダに住み着くようになった。 その猫は、あとでわかったことだが、同じマンションのある階の住人が飼っていた猫で、新しく犬を飼うために猫を捨てたそうだ。  なんという奴だ。

 当事務所の入っているマンションは住居棟と事務所棟がL字型で接続しており、事務所のベランダは住居棟の通路に接続している。 猫は、窓部分では不安なのだろうか壁とエアコンの室外機、ベランダの仕切り板に囲まれた隙間にいたようだ。

 いつも事務所に着いて部屋に入ると、まず電気を点け、ブラインドを開け、窓を開けるのだが、その日から電気を点けると黄色い模様の猫が窓のところまでくるのがわかった。 そしてブラインドを開けると猫が上を見上げて物欲しそうな顔をしている。 可哀想ではあるが当方には猫を飼う気は全くないので目が合っても無視した。 

 そのうち、カミさんがあまり可哀想なのでエサでもあげようかと言い出した。 カミさんのたっての希望でエサをやることにした。 といってもペットを飼ったことがないので、まずはエサと器と、猫の本を買ってきた。

 猫は、最初は猫なで声でミャーミャーとエサをねだってきたが、そのうち慣れてくると、「エサ、早くくれ」とばかりにきついなきごえになる。 エサと水を入れた器をならべると、早速無我夢中でエサを食う。 エサを食べている間に櫛状のもので毛スキをしてやる。 初めの頃は嫌がって、エサを食べながらシッポで追い払おうとした。 そのうち寝そべっているときでも毛スキを嫌がらなくなった。 

 「おい、ノラ、気持ちいいだろう。 感謝する気があるなら、たまにはネズミでも捕ってこいよ。」 と言いながら毛スキをしていた。 私はその猫をノラと呼んでいた。 カミさんはトラと呼んでいた。 あるときノラが道路脇の側溝の中を覗き込んでいたので、「ノラ、なにやってんだ」 と声をかけた。 そしたらノラは側溝の中を覗いたまま短く「ミャ」。 つまり、邪魔するな、あっち行け、と言われたように思えた。 ネズミを狙っていたんでしょう。

 それか数日後、ノラが窓のところでミャーミャー騒ぐので窓を開けたところ、何とネズミの死骸をくわえて入ってきた。 そして私の目の前にネズミをポイと置いて、興奮して、ネズミの死骸の周りを飛び跳ねている。 「よくやった、よくやった」と褒め称え、「よし、褒美だ」と言いながら大好物の煮干しを器に入れ、ノラをベランダに連れて行った。 煮干しを食べている間にネズミの死骸をかたづけた。 そしてまた毛スキをしながら 「よくやったね。お前はすごいね。 かしこいね。 でも今度は部屋にもってこなくていいからね 」とノラの耳元で囁いた。

 2~3日後、トラがベランダで騒いでいるとカミさんが言う。 見に行くとネズミの死骸を置いてその周りを興奮し飛び跳ねている。 ノラは私の言葉を理解していたんですね。 部屋には持ち込まなかった。 猫は人の言葉を理解する能力がある。 

|

« 50年前の恐怖 | トップページ | ピラミッドについて »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事